2017年10月17日火曜日

Tr回路の実験 エミッタフォロワ その2

エミッタフォロワの発振


前回ブレッドボードで実験をした時、うっかりしてブレッドボード上のGND線を接続していなかった。


ここをつないでおかないと、積セラとアルミ電解コンデンサによるデカップリングがされない。ここを接続すると、AD9833の出力(0.6Vp-p)を直接入力しても発振しなくなった。

大した手間ではないので、ユニバーサル基板で回路を組んで測定してみた。エミッタ抵抗は470Ωにした。

回路図

基板図

部品面

ハンダ面

入出力波形


シミュレーション回路図

過渡解析

負荷抵抗を1kΩ、470Ω、330Ωにしてパラメータ解析した。1kΩではクリップしないが、470Ωでは約-1.9V、330Ωでは約-1.6Vで波形の下側がクリップしている。

オシロで測定


負荷抵抗1kΩ(実測値993.4Ω)

ch1:入力 ch2:出力

入力は4Vp-p、出力は3.84Vに低下しているが波形は歪んでいない。

負荷抵抗470Ω(実測値467.5Ω)

ch1:入力 ch2:出力

負荷抵抗が470Ωの場合、下側が約-1.8Vでクリップしている。

負荷抵抗330Ω(実測値330.9Ω)

ch1:入力 ch2:出力

負荷抵抗が330Ωの場合、下側が約-1.5Vでクリップしている。

振幅の減衰はシミュレーションには現れていないが、波形のクリップはほぼシミュレーションどおりだと思う。

周波数特性


AC解析

負荷抵抗が1kΩのとき、-3dBのカットオフ周波数は20Hzより少し下あたり。

AD9803ファンクションジェネレータ(Bypass出力)で100kHz~3MHzのサイン波を出力し、入出力のオシロの振幅の表示値を比較してみた。

電源電圧:9V 負荷抵抗1kΩ


グラフは多少ガタガタしているが、3MHzまで出力の減衰は見られない。

測定値

f(kHz) In(mVp-p) Out(mVp-p) A A(dB)
100 544 544 1 0
200 552 528 0.956521739 -0.386103104
300 544 528 0.970588235 -0.259299543
500 544 512 0.941176471 -0.526578774
600 544 520 0.955882353 -0.391911121
700 544 512 0.941176471 -0.526578774
800 528 512 0.96969697 -0.267279231
900 528 504 0.954545455 -0.404067722
1000 512 488 0.953125 -0.417002779
2000 416 400 0.961538462 -0.340666786
3000 320 312 0.975 -0.219907686

低域はWaveGeneとWaveSpectraで周波数特性を測定した。

電源電圧:9V 負荷抵抗1kΩ

WaveSpectraのFFTの設定は、サンプルデータ数:32768、窓関数:なし(矩形)

オーディオ・インターフェイスの入力モードはGuitarモード(1MΩ)

ループバック

エミッタフォロワの出力

ループバックと比較して、エミッタフォロワ回路を通すと20Hzあたりでおおよそ-3dBになっている。

10kHz以上の減衰はLoopBackでも出ていて、これはエミッタフォロワ回路での減衰ではなく、測定に使っているオーディオ・インターフェイス(TASCAM US-144 MKII)の特性。

ステップ応答


矩形波だけのファンクションジェネレータで100kHz/1Vp-pの矩形波を出力して、ステップ応答を測定してみた。


ch1:入力 ch2:出力

立ち上がり/立ち上がりとも20ns未満で、遅れは殆ど見られない。エミッタ接地回路と比べるとかなり速い応答だ。

出力の線が太くなっているので拡大してみると


ch1:入力 ch2:出力

立ち上がりの振動が見られる。平坦な部分の振動も入力より大きくなっている。なんでかはわかりません(^q^;

歪率


PCM5102Aファンクションジェネレータで1kHz/1Vp-pのサイン波を出力して、WaveSpectraで測定してみた。

入力

出力

THDの表示値は0.027%から0.070%に増加。エミッタ接地回路の時と同じような値だが、エミッタ接地回路で出ていた4次高調波歪はあまり出ていない。

まとめてきな


実験してみて、エミッタフォロワが発振しやすいというのはホントだと思った。エミッタフォロワの場合、デカップリング・コンデンサは必須。

高周波数の特性は良いが、ACカップリングによる低域の減衰は気をつけないといけない。30Ωのヘッドホンをつなぐとすると、265uFで-3dBのカットオフ周波数が20Hz程度になる。

負荷が重い時に振幅が大きい信号でもクリップしないようにするには、エミッタ抵抗の値を下げてアイドル時の電流を多く流す必要がある。これはバッテリー駆動で使おうと思うとなかなか厳しい要件だと思う。

エミッタフォロワの振幅の減衰はLTSpiceではシミュレーションできない。(なんかすればシミュレーションできると思うが)

2017年10月15日日曜日

Tr回路の実験 エミッタフォロワ

エミッタ接地回路だけでは出力インピーダンスが高いので、普通はバッファ回路を後段に入れて使う。

エミッタフォロワは電圧は増幅できないが、たくさん電流を流せるのでバッファ回路として使える。

LTSpiceでシミュレーション


回路図

信号源はAD9833の出力(0.6Vp-p)ではなく、4Vp-pに電圧増幅したものを想定している。

実験にはAD9833ファンクションジェネレーターのAmp部で増幅して信号源として使う予定。

AD9833ファンクションジェネレーターのAmp部の出力段はAD822のボルテージフォロワで組んでいて出力インピーダンスは十分低い。AD822自体の出力インピーダンスはDATASHEETによると1kHzで0.04Ωとなっている。(実測については後述)

ベースバイアスはR1とR2で分圧して4.5Vとした。

エミッタ電流Ieを10mA程度流すつもりでIe = (Ve / R3)なので

R3 = (4.5V - 0.6V) / 10mA = 390Ω

で、手持ちの200Ωの抵抗を2本直列にして使うことにして、400Ωとした。

負荷抵抗の影響を見るために、R4を100Ω~1kΩでパラメータ解析した。

出力電位

出力電位V(out)は負荷が軽いときはほぼ4Vp-pで出力できているが、負荷抵抗が400Ω以下のときは下側がクリップしている。

エミッタ電流

エミッタ電流Ie(Q1)を見ると、負荷が重いときは0mAで出力電流がクリップしている。ベース・エミッタ間はP→Nのダイオードなので逆向きに電流は流れない。この回路定数だと、負荷は500Ω程度までということになる。

負荷が軽いときはエミッタ電流は10mAを中心に流れている。

周波数特性



周波数特性は、高域は1THz(!)までシミュレーションしてみたが、一向に減衰しない。(もちろん実際の回路はそうはいかないですが)

逆に、低域は負荷抵抗によってかなり減衰する。ACカップリングしているC2(10uF)と負荷抵抗R4によってHPFを構成するためで、負荷が100Ωの場合カットオフ周波数は、

fc = 1 / (2 * π * 100Ω * 10uF) ≒ 150Hz

になってしまう。

というわけで、単純なエミッタフォロワ(かんたんなA級アンプ)でスピーカーやヘッドホンを歪みなく駆動するのはなかなか難しい話になってくる。

エミッタフォロワは発振しやすい


「定本 トランジスタ回路の設計」にエミッタフォロワは発振しやすいと書いてあったが、デカップリングコンデンサを入れておけばそうそう発振しないと思っていたが、ブレッドボードで組んだ回路だといとも簡単に発振してしまった。

ブレッドボード図


AD9833ファンクションジェネレータのAmp出力から1kHzのサイン波を出力した場合、発振しない。(負荷抵抗:1kΩ、電源電圧9.00V)

Amp出力 2Vp-p出力

ch1:入力 ch2:出力

※0Vに線が出てますが、キャプるタイミングミスだと思います。次回(?)測定し直します。

Bypass出力の場合、発振。(負荷抵抗:1kΩ、電源電圧9.00V)

Bypass出力 0.6Vp-p出力

ch1:入力 ch2:出力

拡大

ch1:入力 ch2:出力

また、AD9833ファンクションジェネレータの電源をOFFにしても発振してしまった。

Bypass出力 AD9833ファンクションジェネレータ電源OFF

ch1:入力 ch2:出力


これだけ発振しやすいと測定が難しいので、ブレッドボードではなくユニバーサル基板でエミッタフォロワの回路を組んで測定してみる予定です。

AD822の出力インピーダンス


AD9833ファンクションジェネレータのAmp部(AD822を使用)の出力インピーダンスを測定(する努力を)してみた。

1kHz、1Vp-pのサイン波を出力して負荷を変えて測定。

無負荷

負荷100Ω(実測値:100.13Ω)

負荷10Ω(実測値:9.93Ω)

出力負荷が10Ωになると波形の上側がクリップしてしまった。これは出力インピーダンスによる減衰ではなく、中の回路の影響でクリップしているんだと思う。

ともあれ、100Ωまでは電圧降下することなく十分ドライブ出来ている。

2017年10月11日水曜日

JFET入力のOPAMP比較 TL072 NJM072 NJM2082 OPA2134 MUSES8920

JFET入力のOPAMPの定番といえばTL072だとおもうが、セカンドソースのNJM072は特性が同じというわけではなく、性能を向上させているそうだ。

入力インピーダンスの高いOPAMPを使いたいとき選択に迷うので、手持ちのJFET入力のOPAMPの中でいくつか比較してみた。

DATASHEETの仕様比較

品種 動作電源電圧 消費電流 スルーレート 利得帯域幅積 入力換算雑音電圧 THD VIO IIO RIN
TL072CP ~±18V 1.4mA x 2 13V/us 3MHz 4uV / 18nV/√Hz 0.00300% 10mV 100pA 10TΩ
NJM072D ±4V~±18V 3mA 20V/us 5MHz(fT) 4uVrms - 10mV 50pA 10TΩ
NJM2082 ±4V~±18V 4mA 20V/us 5MHz 1.6uV / 13nV/√Hz - 2mV 200pA 10TΩ
OPA2134 ±2.5V~±18V 4mA x 2 20V/us 8MHz 1.2uV / 8nV/√Hz 0.00008% 0.5mV 5pA 100TΩ
MUSES8920 ±3.5V~±18V 9mA 25V/us 11MHz 1.1uVrms / 8nV/√Hz 0.00040% 0.8mV 2pA -
NJM4580 ±2V~±18V 6mA 5V/us 15MHz 0.8uVrms 0.00050% 0.3mV 5nA -


いつも使っているバイポーラのNJM4580も比較対象としてテストしてみた。

ステップ応答


回路図

増幅率は、1 + (R2 / R1) = 2で2倍増幅となる。R1=R2なら同じ2倍の増幅率となるが、実はここの抵抗値によってレスポンスが変わってくる。いずれ調べてみたいと思いますが、今回は保留。


LTSpiceのUniversal Opamp2を使って500kHzの矩形波を入力してシミュレーションすると、ちょうど2倍の増幅になっていてRise Timeは0.4us(400ns)程度になっている。


電源電圧は±5Vとした。

TL072

ch1:入力 ch2:出力

NJM072

ch1:入力 ch2:出力

TL072とNJM072を比べると波形は似ているが、多少違う。個体差もあるのかも知れない。Rise Timeは180ns程度で、LTSpiceのUniversal Opamp2と比べると2倍ぐらい速いレスポンスだと思う。

入力が2Vp-pで出力が4Vp-pぐらいなので、2倍の増幅率はキープ出来ている。

NJM2082

ch1:入力 ch2:出力

NJM2082は少し応答が遅いようだ。

OPA2134

ch1:入力 ch2:出力

OPA2134は優秀なOPAMPだが、ステップ応答は謎の振動が現れている。全体で見るとぐちゃぐちゃだが、波形の上昇時から最大値になるあたりはパキッとしている。

ヘッドホンアンプでOPA2134を使うと独特のきらびやかさが出るが、この特性が影響しているのかも知れない。

MUSES8920

ch1:入力 ch2:出力

NJRのオーディオ用のハイグレードOPAMP。OPA2134に比べるとクセがない波形だと思う。スルーレートも072系より高速だと思う。

NJM4580

ch1:入力 ch2:出力

比較用に計測してみたが、JFET入力のOPAMPと比べると立ち上がり/立ち下がりが遅く、500kHzの矩形波入力だと、ほとんどLPFを通したような波形。

まったりしているがクセがないとも言えるかも。

周波数特性


周波数を変えて周波数特性のグラフを作るのはさすがにめんどくさいので、AD9833ファンクションジェネレーターで2MHzのサイン波を出力して入出力の増幅率を見てみた。

2MHzはAD9833でギリギリサイン波っぽい波形が出力できる周波数。

シミュレーション

Universal Opamp2だとちゃんと増幅出来ているところは6dB(約2倍)で、2MHzだと5.4dB程度になる。

比較対象としてNJM4580を使って1kHzのサイン波を測定してみた。

NJM4580@1kHz

ch1:入力 ch2:出力

入力が568mV、出力が1,144mVなので、1,144mV / 568mV ≒ 2.01 でほぼ2倍の増幅になっている。

以下、2MHzでの測定。

TL072

ch1:入力 ch2:出力(以下同)

NJM072

NJM2082

OPA2134

MUSES8920

NJM4980

NJM4580は波形が歪んでいて、OPA2134とMUSES8920は位相差が少ない。

出力 / 入力で増幅率をグラフ化してみた。


6dBが本来の増幅率なので、上にずれている場合は高周波数(@2MHz)でピークがあり、下にずれている場合は帯域が狭いことになると思う。

バイポーラのNJM4580に比べるとJFET系はおおむね帯域が広そうな感じだ。

さすがに2MHzの音を聴ける人はいないと思うが、測定用途で使う場合は帯域が狭すぎたり特性にピークがあると何かと心配になる。


2MHz In(mV) Out(mV) Av Av(dB)
TL072 432 840 1.94 5.78
NJM072 432 968 2.24 7.01
NJM2082 424 848 2.00 6.02
OPA2134 448 1376 3.07 9.75
MUSES8920 432 1136 2.63 8.40
NJM4580 416 656 1.58 3.96